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Technical Infomation


温浴装置や温泉水に対応可能な
残留塩素計の機種選定に関する解説


対象残留塩素計 IR-10-40W-22
IR-10-40W-42
 温泉水や浴槽水は、様々な成分を含有しており、その成分の影響により標準的な残留塩素計では充分な測定ができずに適用ができない温泉水が多々ありました。
 今回は、そのように多様な物質を含有した温泉水等に特化した残留塩素計の紹介です。
 作用電極に白金電極を採用した型式:IR-10-40W-22に BPモードを搭載した機種の開発に成功し販売を開始しました。
 当該機種は、従来 APモードしかなかったIR-10-40W-42型残留塩素計に、温泉水にも対応可能な残留塩素計の開発を行い、白金電極の感度変化や感度劣化を抑えるべき方法としまして白金電極表面を常に清浄で一定の条件になるような連続パルス洗浄方法の開発に成功しました。
 このことにより従来のIR-10-40W-42型に APモードに比較して、遊離残留塩素測定やオキシダント測定にさらに長期間安定した測定が可能となりました。
 (ご興味をお持ちの方は弊社ホームページに掲載されました「温浴施設向け残留塩素濃度計」資料1 及び 資料2 を併せてご参考にしてください)
 但し、本書に記載してある内容は 現段階での判断結果であり、今後の試験ならびに解析により内容が変更及び追加となる事が予想されます。また、本書に記載されている内容は 残留塩素濃度計の適用を保証するものではございませんので、予めご了承願います。
機種構成と仕様
Index
1. 検討項目
2. DPD法による分析値について
3. サンプル水分析について

1. 検討項目

 温浴施設特に温泉水で残留塩素濃度計をご使用になられる場合には、以下に記載した成分の確認が必要になります。
分類 項目
水質成分 @ pH
A 電導度
B 液温
C 陽イオン
D アンモニア性窒素(含窒素有機物質)
E 陰イオン
F 溶存ガス成分
添加剤 G 適用塩素剤
H 酸化剤
I 還元剤
J 入浴剤
K 洗浄剤及びスケール防止剤等
@ pH
(注意)  検水によってはpH値が大きく変動するものもあり、その場合には残留塩素濃度計の指示値に影響を与えます。温泉の場合、その有無を確認する1つの方法として「湧出地における調査及び試験成績」と「試験室における試験成績」のpH値を比較します。そのpH値に差がある場合には、検水のpH値が変動する可能性がありますので注意が必要です。
 酸性領域では、塩素ガスが発生する危険があります。
A 電導度
(備考)  弊社の残留塩素濃度計は、検水の電導度の影響を受けにくくするために 3電極式を採用していますので 10mS/m以上での使用が可能です。また、測定濃度が 1mg/L以下であれば、さらに低電導度でも適用できる場合がありますのでご相談ください。
B 液温
(備考)  残留塩素濃度計の接液部の材質から温度については、最大 45℃まで測定が可能となります。検出部(残留塩素センサ)の設置検水温度は、45℃以下にする必要があります。45℃以上の高温での測定が必要な場合には、高温測定専用の残留塩素計がございますので、お問い合わせください。
C 陽イオン
※1 ※2 定期的な希塩酸等の酸によるセンサ電極部の洗浄が必要です。
(備考)  鉄(第一鉄イオン、第二鉄イオン)、銅イオン、マンガン等の重金属類が含有されていますと、残留塩素濃度計センサ部に付着し、残留塩素センサの感度低下が発生する恐れがあります。
(注意)  表以外の金属イオンについても妨害となります。また、重金属イオンが数種類存在する場合には、その合計量が 0.3mg/Kg未満(機種により 1.0mg/Kg未満)である必要があります。カルシウムイオン、マグネシウムイオンが多量に存在しますとセンサ洗浄液(希塩酸等)による定期的な洗浄が必要となります。
(注意)  殺藻装置や浴槽水消毒槽に使用されます銅イオン発生装置や銀イオン発生装置と併用する場合には、必ず Bモード設定が必要となります。
D アンモニア性窒素(含窒素有機物質)
(備考)  アンモニア性窒素(アンモニウムイオン)などの含窒素有機物質は、残留塩素と反応して結合残留塩素(クロラミン)を生成しますので、遊離残留塩素での濃度管理が難しくなります。アンモニア性窒素量の約 8〜10倍の塩素を注入するまで(不連続点まで)は、主として結合残留塩素が存在しますので、遊離残留塩素を検出するためには それ以上の塩素が必要といわれています。
 検水中に結合塩素が多量に存在する場合、DPD遊離残留塩素測定法の手分析値もプラスの誤差が発生し正確な測定が出来ない為、全残留塩素濃度での濃度管理(結合塩素処理)を行うこととし、 Bモードを適用します。
(注意)  遊離塩素にて測定管理をおこなう場合は、水質試験結果や温泉分析書に明記されていなくとも、検水中のアンモニア性窒素(アンモニウムイオン)の含有量を調査する必要があります。
【参考】 詳細は、浴槽水のモノクロラミン消毒資料から確認いただけます。
 アンモニア性窒素を含有するものやアルカリ性のものでは塩素剤の投入量と遊離残留塩素濃度が比例しないことや遊離残留塩素の消毒効果が低下することが知られており、厚生労働省通知による生食発0919第8号 「公衆浴場における衛生等管理要領等の改正について」では、浴槽水の消毒法として遊離塩素による方法とモノクロラミンによる方法の 2つの選択肢を設けました。モノクロラミン消毒では、浴槽水のモノクロラミン濃度は 3mg/L以上に保つこととされています。
 IR-10-40W-22 では、フルスケールを 5mg/Lとし Bモードによる測定でモノクロラミン測定に対応可能です。
E 陰イオン
(注意)  IR-10-40W-22 Bモード測定では、塩化物イオン濃度が 1000mg/Kg以上含有されている場合には、残留塩素センサの寿命に影響を及ぼす恐れがあります。
【参考】  よう化物イオン臭化物イオンを含有した検水では、注入した次亜塩素酸とよう化物イオンや臭化物イオンが反応し生成する物質の影響により、残留塩素計の指示値と DPD法との測定値の整合性が失われることがあります。
F 溶存ガス成分
(注意)  遊離硫化水素が存在する場合には、残留塩素消毒は塩素を消費するためにお勧めできませんが、残留塩素計での残留塩素測定は可能となります。
 詳細はお問い合わせください。
【参考】  温浴装置における人工炭酸泉では、炭酸ガスの注入時に検水 pH値が pH5前後の弱酸性になります。残留塩素計は pH値の変動による影響を受けますので、炭酸ガスの注入時にスパン校正を行うことが必要です。
G 適用塩素剤
(注意)  電解装置による塩素注入時には、電解により発生した溶存水素ガスが検水中に存在する場合がありますのでご相談ください。
H 酸化剤
(注意)  検水中に酸化剤が存在している場合には、残留塩素濃度計の測定値に正の影響を与えます。また、表以外の酸化剤についても同様になります。
 特に過酸化水素の場合にはセンサ故障を引き起こす可能性がありますので、配管洗浄などで過酸化水素を使用する際にはフローセル内に洗浄水が流れないようにする必要があります。万が一高濃度の過酸化水素水にセンサが接触した場合は指示値がマイナスに振り切れたりして正常復帰するまで 1〜2日ほどかかることがあります。
I 還元剤
(注意)  検水中に還元剤が過剰に存在している場合には、残留塩素濃度計の測定値に影響を与えます。また、表以外の還元剤についても同様になります。
 脱塩処理後の残留塩素濃度の監視として残留塩素濃度計を適用する場合には、別途ご相談ください。
J 入浴剤
(注意)  無機塩類系(市販されている入浴剤など)に関しましては、炭酸水素ナトリウム(重曹)や硫酸ナトリウム(芒硝)などの粉末薬品に香料と着色剤を加えたものがありますが、この場合には残留塩素濃度計の適用は可能です。但し、このうち無機アンモニウム塩を含んでいるものに関しては、アンモニア性窒素(含窒素有機物質)と同様に残留塩素と反応して結合残留塩素を生成しますので遊離残留塩素計の適用は困難です。
 着色剤に色が付いている場合の検水の残留塩素測定は、DPD法などの比色法が使用できない場合がありますので注意が必要です。
 漢方薬は、当然有機成分の薬効性に期待して使用されるものであり、これらの有機成分に滅菌のために塩素剤を用いても、成分が酸化されたり、遊離残留塩素は完全消失するのみである事が考えられます。このため、有機物を含有した漢方薬やお茶等の植物に対しては塩素剤の滅菌保証が得られないために残留塩素濃度計の適用はできません。
K 洗浄剤及びスケール防止剤等
 洗浄剤(過酸化水素水)については、過酸化水素洗浄処理に関する残留塩素計の対処方法を参照してください。
 スケール防止剤等については、ご相談ください。
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2. DPD法による分析値について

 遊離残留塩素の手分析に関しては、電流滴定法やジエチル-p-フェニレンジアミン法(DPD法)などがありますが、電流滴定法は装置が高価で 操作に熟練を要するため現場には不向きなこともあり、実際にはDPD法で行われるのがほとんどとなっています。しかし、DPD法は上水試験法に基づき水道水の残留塩素濃度を測定する目的で作られているために、水道水以外で使用した場合には発色のドリフト、異常発色、残留塩素がなくても発色するなど特性があり、分析値に再現性が得られないことや 機種(試薬)毎に値が異なることがあります。残留塩素計が正確に測定できる場合でも手分析が正確にできない場合もありますので注意してください。  DPD法の機種によりその特性は様々ですが、下表のような検水条件の場合には手分析方法を検討する必要があります。
【参考】 浴槽水での結合塩素の影響
 DPD遊離測定法では、検水中に結合塩素が含まれていますと、時間とともに発色が濃くなる傾向があります。DPD法の取扱説明書などには1分後に測定値を読み取ることが記載されていますが、浴槽水では結合塩素の影響が考えられるためになるべく早く測定値を読み取ることが必要となります。
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3. サンプル水分析について

 事前にご連絡頂ければ、弊社にてサンプル水を分析する事が可能です。
 水質試験結果や温泉分析書が入手できない場合や試験日(分析日)から年月が経過している場合、もしくはこれらの成分表から判定が困難な水質に関しましては、適用するサンプル水について残留塩素濃度計が適用可能かの分析を行うことが可能です。その場合には、原水(源泉)と測定水の両方をサンプル水でよく共洗いした2リットルのペットボトルに 2本程度、全量詰めてお送りください。また、サンプルには採取日と採取場所(A棟高架水槽、男湯露天風呂など)を明記して頂き、水質試験結果や温泉分析書を必ず同送してください。また、成分が不明な入浴剤などに関しましても、ご使用になられる入浴剤と原水をお送り頂ければサンプル調査することも可能です。
 成分表からのデータでは 残留塩素濃度計の適用が不可能と思われるケースでも、分析結果からは残留塩素濃度計の適用が可能な場合もあります。
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テクノエコー株式会社 企画開発室